くちぶえ
モーヌ。




そこはかとなく

カオス から はじまる

巣箱の なかで 羽音が する

複数が 単数を 響きあう

羽音が する

とおく 草陰に 一軒の 廃屋...

誰かの 追憶を 骨組み

胸の 孤鳥ことりに 薫った スケルツオが

ひかりの 霧雨を ささやいた

真冬に 駆け抜けた はずの 風の 叫びを

朽ち こぼれた 家屋の 水珠に

変化を 飛んで ひからせる





はれ くもり

フルート リュート

踏み 荒らされて いない 放課後 には

ぼさ ぼさの 髪で やさしく つかまえられた

時空に 畳句で 転がって 走句に なり

遠望する 田んぼの 少し 伸びた 苗を 過ぎ

ヒメジオンや アカツメクサや ノカンゾウ

白と 紅と オレンジと みどりの 清楚な 疾走が

緑園の 伸直する 帯を はせ

見上げた 天の橋の 下を くぐり 抜ける

巣立った ばかりの 子の 燕尾に 乗った





くたびれて 眠った あと

くちぶえを 吹きながら 立つ

風来の ように

はげしい 変転を 夢見て いた...

時は 経って いて

もう すでに それらの 夢や 旅程は じぶんの

内部へと 編みこまれて いるのでは ないか?

( と おもった )

出発した 日は 秋立つ日 だった

いま また 夏の日の 突端に 経めぐって

立って いた





あれは かっての 歌人の 見た

空の なか道を ゆく

田野を ついばむ

G線だけで うたわれる うた

揚げ ひばりの ようだ...

それが くちぶえに 寄り 添うと

ともづれの 蛙声が する

とだえたあとの かなしみたちが

違った 再会を 誓いながら 放たれる

たった ひとつ だった メロディーは

フェアーに なる











自由詩 くちぶえ Copyright モーヌ。 2007-07-13 07:31:09
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