天国へのメッセージ
円谷一

 世界の端にあるラジオ局
 リスナーは主に旅人達である あとは動物達
 様々なメッセージやリクエスト曲が来るが全てに応えてくれる
 いつも世界の端についての情報がO.A.開始時に流される
 宇宙の色は何色だったとか 一番遅い日の出が何時頃だとか
 DJは人間や動物など様々である
 世界の端で仕事をしているのは仙人やら精霊達だけだが需要があるのでどうしても続けなければならないのである
 辺りは荒廃した土地ばかりで風が強く 作物が採れないので遠い都市からはるばるトラックで食料や水を運んでこなければならない しかも大量に
 ラジオ局に勤めている生き物達は家族と離ればなれになって働いている 彼らは夢を発信し続けているのだ 代わりにリスナーから夢を貰うせめてものお返しとして
 飛行機や衛星が無い世界だから リスナー達の見聞でそれぞれの生き物の頭の中に世界が出来上がっている 世界には端があることは分かっているのだが 世界がどんな風にできているのか手紙を読むだけで生き物達はワクワクしている
 世界の中心には巨大な木が立っていてこの世界の端まで見渡せるとか この世界は宇宙に浮かんでいるとか 世界の裏側に地獄があるとかだ(地獄でゴッホは絵を描いているとかだ)
 でも天国は何処にあるのかまったく分からなかった 天国だけは この世界から遠い場所にあるものと信じられていた リスナーからの情報でも ある湖の周りに天国が広がっているとか 虹の架かる場所に天国が存在するなどと色々な憶測が送られてきたが真相は掴めず 天国を見つけられた者には賞金が出るという番組まで出てきた
 その噂が噂を呼び この世界の王様にまで耳に届くようになった 王様は直接世界の端のラジオ局まで訪れ 私にその天国の在処を探すのを協力させてもらえんかのう? と頼み込まれたことがあった
 その結果 世界国家は国営ラジオ放送で 天国を見つけることができた者には一生分の富を授けると大体的な発表がなされた 世界中の生き物達はこぞって世界中を探し回るという大冒険時代となった お陰で科学の進歩は飛躍的に進歩し 世界の端のラジオ局は世界中で聴けるようになった
 世界の端は重要都市として発達し 生き物達が爆発的に増えた 世界の端のラジオ局は巨大なものとなったが 昔の旅人や動物達のリスナーが昔を懐かしむ声が聞こえてきた だが時代の波は防ぎようもなく ラジオ局と都市は上手い具合に流されていった
 結局天国は何処にも見つからなかった でも生き物達は天国を信じ続けた 生き物達は死んだ時 何処へ行くのか? それは現在になっても最大の謎である ラジオ局は未だに天国のことを見聞を参考にしながら話しているが 決定的な結論は出ていない 答えが出るのはずっと先になっても決して無いだろう 何故ならそれが出ると宗教が無くなってしまうからだ


自由詩 天国へのメッセージ Copyright 円谷一 2007-07-13 05:23:06
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