ホメロス「オデュッセイア」メモ 1-2
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第一歌  テレマコス、父の消息を求める旅を決意する


【人物】
オデュッセウス…イタケの王。トロイア戦争の英雄。今は放浪の身
テレマコス…オデュッセウスの息子
ペネロペ…オデュッセウスの妻
メンテス…タポスの王。アテネが人間に扮するのに姿を借りた
アンティノオス…求婚者のリーダー格
エウリュマコス…求婚者のリーダー格
ペミオス…楽人。宴でアカイア勢のトロイアからの帰国の物語を歌う
エウリュクレイア…屋敷の侍女。テレマコスを養育した乳母
ゼウス…オデュッセウスを帰国させることを決める
アテネ…オデュッセウスに同情的。イタケへ行きテレマコスを励ます
ポセイドン…キュクロプスの目を潰したオデュッセウスに腹を立てている
ヘルメス…ゼウスの命により、カリュプソの許へ遣わされる
カリュプソ…オデュッセウスを夫にと望んでいる女神


【概略】
 (1) 神々の集会、オデュッセウスを帰国させることが決まる
 (2) 驕慢な求婚者たち、オデュッセウスの屋敷を荒らしている
 (3) メンテス、テレマコスに集会の開催と旅立ちを勧める
 (4) テレマコス、求婚者たちを糾弾する集会を明朝開催すると宣言する

(1) 神々の集会、オデュッセウスを帰国させることが決まる
 神々の集会でアテネがゼウスに建言し、オデュッセウスを帰国させることが決まる。
 トロイア戦争が終結して十年。オデュッセウスは故郷イタケに帰国できないでいる。
 オデュッセウスはオギュギエの島の女神カリュプソの所に引き止められていた。
 カリュプソの許へはヘルメスを、イタケの島へはアテネを遣わすことになる。

(2) 驕慢な求婚者たち、オデュッセウスの屋敷を荒らしている
 アテネは賢者メンテスに扮して、イタケの国のオデュッセウスの屋敷を訪れる。
 屋敷では、求婚者たちが食事・酒・遊びの宴に興じている。
 テレマコス、メンテスを屋敷に案内し、騒がしい求婚者から離れた席でもてなす。
 メンテスは、ラエルテス翁の旧友と自己紹介し、この騒ぎは何事かと問う。
 テレマコス、父が行方不明になって以来、近隣から求婚者が押し寄せたと言う。

(3) メンテス、テレマコスに集会の開催と旅立ちを勧める
 メンテスはオデュッセウスさえ健在ならと嘆き、次のようにアドバイスする。
 「明朝アカイア人の集会を開いて求婚者たちに屋敷からの解散を求めなさい。
 それから船を求めて、父の消息を尋ねるために出かけなさい。
 まずピュロスへ行き、ネストルに会いなさい。
 次にスパルテへ行き、メネラオスに会いなさい。」

(4) テレマコス、求婚者たちを弾劾する集会を明朝開催すると宣言する
 アテネが帰ると、楽人ペミオスがトロイアからの帰国談を歌っている所だった。
 ペネロペは夫を思い出すから止めよというが、テレマコスは母に反駁する。
 テレマコスは求婚者に告げる。「明朝集会を開いて、あなたがたに退散を申し渡す」
 求婚者のうち、アンティノオスとエウリュマコスは怒って挑発的な口をきく。
 夕暮れまで宴はつづき、暗くなると求婚者たちは帰った。テレマコスは寝床に入る。


【メモ】
第一歌はテレマコスと賢者メンテスの会話が主である。テレマコスが現在の困苦を語り、メンテスがこれからの行動の指針を助言する。会話がおわりメンテスが去ると、テレマコスは心に勇気と信念がふきこまれており、それが女神アテネだったことに気づく。

冒頭はムーサへの祈りであり、ムーサによって吹き込まれた物語が作者を通じて語られる形式になっている。

オデュッセイアの物語は「In medias res」(ラテン語:事の途中から)である。それは物語が途中から語られる方法のことであり、設定や人物はフラッシュバック(進行中の物語に過去のシーンをさしはさむ)あるいはストーリーテリング(口頭による物語)によって説明される。

オデュッセウス親子を含んだ系図。




アイオロスは第十歌に登場するが、息子が六人と娘が六人である、とホメロスは記しており図とは異なる。図は神話関連サイトの情報を基にしている。カリュプソがアトラスの娘とは第七歌で述べられている。
オデュッセイアの後日談として、テレゴノスが父オデュッセウスを槍で傷つけて殺し、その後ペネロペと結婚して、キルケによって至福の人々の島へ送られる、というものがある。

ホメロスは神々の起源や過去を明らかにしない。ホメロスの時代にはギリシア神団は確立していたが、神々の系図は整理されてなかった。




第二歌  テレマコス、集会を催し、旅立つ


【人物】
テレマコス…アカイア人の集会を開催し求婚者を弾劾する。
アンティノオス…求婚者のリーダー格。
エウリュマコス…求婚者のリーダー格。
メントル…オデュッセウスの旧友。集会でテレマコスを擁護。後半はアテネが扮する。
エウリュクレイア…テレマコスの乳母。女中頭。
アイギュプティオス…集会の一人。集会で最初に口を切る。
ペイセノル…集会の触れ役。
ハリセルテス…集会の一人。ゼウスの鷲を見てオデュッセウスの帰郷を予言する。
レオクリトス…求婚者。集会を強引に解散させる。
ノエモン…テレマコスのため船の手配をする。
ゼウス…集会へ鷲を飛ばし、予兆を与える。
アテネ…メントルに扮してテレマコスを助ける。


【概略】
 (1) テレマコス、アカイア人の集会を催し、求婚者の悪行を訴える。
 (2) 求婚者の圧力の前に、集会の効果はなく散会となる。
 (3) テレマコス、船で旅に出発する。

(1) テレマコス、アカイア人の集会を催し、求婚者の悪行を訴える。
 朝、テレマコスは触れ役を遣わして集会所にアカイア人を集める。
 テレマコス、求婚者たちに屋敷の財産を荒らされていることを民衆に訴える。
 アンティノオス、ペネロペの態度が曖昧なのが悪く、早く実家へ帰せと指摘する。
 テレマコス、母を実家へは帰せないし、求婚者は退散しないと報復にあうと告げる。
 ゼウス、そこへ二羽の鷲を広場の上空へ飛ばす。
 ハリテルセス、鷲を見てオデュッセウスの帰還と求婚者の危機を予言する。
 エウリュマコス、ハリテルセスを罵倒し、ペネロペの結婚を要求する。

(2) 求婚者の圧力の前に、集会の効果はなく散会となる。
 テレマコス、父の消息を求めてピュロスとスパルタへ旅に出ることを告げる。
 メントル、乱暴な求婚者たちを一向に咎めようとしない領民たちを煽る。
 レオクリトス、そのような煽りは無駄であると、集会の解散を宣告する。

(3) テレマコス、船で旅に出発する。
 集会は終わり、求婚者たちはオデュッセウスの屋敷へ向かう。
 アテネはメントルに姿を変えてテレマコスを励ます。
 テレマコスが屋敷に戻ると、求婚者たちは彼を嘲弄したり、警戒したりする。
 テレマコス、侍女エウリュクレイアに旅の用意と守秘を申しつける。
 アテネ、テレマコスに扮しノエモンに船の手配を頼む。夕方、船の準備はととのう。
 アテネ、メントルの姿でテレマコスを船に案内。共に船に乗り込み出発させる。


【メモ】
第二歌は集会でのやりとりが大半である。
ペネロペが服を織ったりほどいたりして、求婚を3年はぐらかしたことがアンティノオスによって語られる。

レオクリトスは、集会で民衆を煽っても数で我々は有利なのだから無駄なことだ、と求婚者の多数を誇る。屋敷に押しかけた求婚者の人数は、アポロドーロスによると136人である。

最後にテレマコスが船出するが、このときアテネは求婚者全員を眠らせるので、求婚者はテレマコスの船出に気づかない。
アテネの言いつけで船を手配するノエモンは第四歌にも登場する。

アテネについて。アテネは多様な性質を持つ神であるが、ギリシャの英雄たちをよく鼓舞し守護した。ヘラクレスの試練を助け、ペルセウスのゴルゴ―征服を支援し、ここではオデュッセウスと若いテレマコスを守っている。アテネの系図を示す。





散文(批評随筆小説等) ホメロス「オデュッセイア」メモ 1-2 Copyright hon 2007-07-13 00:01:59
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