夏のアニミズム
岡部淳太郎

そして火は燃えさかり
すべてを焼きつくすだろう
それぞれの
人の生を
それらがあつまったこの
人の世でさえも
焼きつくして
火は遠い天上でわらうだろう
限られた空
その見えない境界では
どんな鐘も鳴ることはなく
鳥は蝋のように溶けて
痩せながら落ちていくだろう
乾ききった疲労は
捨てられずにのこり
昇るための思想はみな
頑なになってしまうだろう
いま世界は
いつまでもつづく夏
どこまでも拡がる
暑熱の版図
だが人が焼かれている
その足下で
草や虫たちは限りのない
平和の中にいる
しずかにそよいでいる葉の
そのひとつひとつに
人のそれぞれの心のように
信ずべきものが
宿っている



(二〇〇七年六月)


自由詩 夏のアニミズム Copyright 岡部淳太郎 2007-07-12 23:27:51
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