泣いてなどいない
松本 卓也

磨き上げられたガラス窓
月明かりさえない空間に
浮かぶ冴えない表情は
もう随分と見慣れてしまった

苦笑にも自嘲にも思える
口の端を歪めた男の姿
汗を含む無精髭はまるで
雨に打たれ草臥れた雑草

機械熱に包まれた小さな部屋
当てにならない経過時間
終わりの見えない作業
考えるのを止めてしまいたい

食っていくために
生きていくために
摩り替わった手段と目的
嘲笑う直面した現実

雨雲が幾重にも被さり
溜息が幾度も零れてくる
窓の向こうに浮かんだ顔に
夜露が一筋伝っていった


自由詩 泣いてなどいない Copyright 松本 卓也 2007-07-12 02:04:54
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