パラソル
もろ



桃売りのおじさんが
店をたたみはじめた頃
空はグレー、
そのずっと先に
茜。

こちらに気がついたおじさんが
 最後だから、
 まけとくよ。
と言う。
桃の香りで酔っ払ってしまうような引力
おじさんの頭から
手拭が遠くへと吹き飛んでいった。

 おまけだから
 昨日も一緒にいれとくよ。

おじさん。
それは誰の昨日だろう
私のならほしくない。
誰かの昨日ならほしいだろうか。

桃を一袋提げて
空は桃色に近いかもしれない。
袋からは今日ではない匂いがした

日を遮っていたパラソルが
遠くへと吹き飛んでいってしまったので
かわりに「おまけの昨日」を折りたたんで
帰り道
通りがかった真っ赤なポスト
右側の受口に投函しよう。


*********poenique**ゴル**07/07/12********


未詩・独白 パラソル Copyright もろ 2007-07-12 01:02:18
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