狗尾草
atsuchan69

ハイウエイを 白い光が流れる、眩しさに

つい、さっきまで 激しく踊った サルサの夜の
緋色のドレスの女が 助手席から身を乗り出し
果てしなく 毒舌を放つ、「終」への招き
エレガントな仕草で残虐なアソビを 片手に
無差別に視線を浴びせる、あまりにも純粋な瞳。

 閃光を放つ、二十世紀の幻影。
 予告殺人の舞台に ひとり佇むカリガリ博士みたいに
 おまえは今夜も、薄汚い麻袋を生贄に被せて
 古代シュメールの呪術をふたたび執り行うつもりなのか?

エンドレスのよう感じられる光景を限りなく追い越しては
高度なテクノロジーに覆われた
しなやかな硝子の小部屋が全速力で夜を奔る

曙色の空の暗みに、輝きのうかぶ宵の一点、
ハイスピードな夜明けにも況して つかの間
強烈な明るさを放つ それは、きっと死への道標//

切ない想いがノスタルジーに浸されては踊りつづける
もはや時間も空間もなく、スパークしつづける 夢、夢、夢

 やがて磨がれた言葉の刃が 数多の神々さえも殺す

恐るべき子供たちが いとも簡単に星の軌道を操り、
神々に代わって永劫に世界を統治する未来へ――

遠くどこまでも婉曲した「僕」がクラベスを打ち鳴らす
シャキーラが唄う、呪われた山羊のように荒い吐息で

 ――れろろ れ、ろーれ、れろろ れ、ろーれ!
 (そう、私たちは飛べるわ。
            もう一度 昔のように・・・・

 夜明けとともに途轍もない衝撃が空に谺(こだま)する
 キミは宙を舞い、とおく 星々の彼方へと飛び去ってゆく

丸められた紙屑のごとく クラッシュした世界のなかで、
ただひとり生きのびた僕は やがて気が触れたかのように笑う
しかし朝の光は、強欲な血塗れの自由を放飼いにすることはない
それでも物影に潜み、残虐なアソビを片手で弄んでは
長い鎖を垂らした夜が未だスパークしつづけている

アスファルトのほんの片隅で、茂った狗尾草が風に揺れ
傍らに首のない女の身体がひどく無惨な姿で転がっていた





自由詩 狗尾草 Copyright atsuchan69 2007-07-10 01:08:27
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