低空飛行
我辣波饅頭

帰宅してから 自転車で飛び出した
およそ時速20キロ程度で変わって行く風景
景色は違えども 懐かしいこの速度の風景

身体が前に進んだ分だけ
心が懐かしい空気に包まれる


車は飛行機で
自転車は翼で
飛行機は翼より早いけど
翼は風を感じる事が出来る

超低空で 市街を駆ける

 

昨日小耳に挟んだあの曲 
頭の中でREFRAINさせて
CDを買いに行く

独りぼっち街の中
まだこの左手に残る
渋谷の雑踏のなか
ふたりぼっちで歩く
あの繋いだ手のぬくもりと
6月下旬の湿度と情景

頭の中のこの歌が云うには 
人は一生で一度ワープ出来るってさ


そうだね 出来るかもね
でも私は思い出せないほどの昔に
ワープを使ってしまったのか
それとも期限切れなのか
もうワープなんて出来ないし
背中の羽根も手入れしていないから
羽ばたくほどに羽毛が舞い散る

歳を重ねた所為か
心が錆びた所為か
それとも実際こんなもんなのか

空とぶ翼も 黄金の手足も
一生に一度使えるっていうワープも
僕の記憶の中にはなかったけど
君の瞳の中にまだ映っているなら
穴の開いたボロいカイト背負ってでも
飛んで見せるよ

君が君の可能性という大切な宝物を
まだ大事に出来るように
作り物の翼でも羽ばたいて見せるよ
それがきっと私の見えない翼

一生に一度のワープを
私以外の誰かに使うならば
笑顔で見送るから
振り返らないでほしいなんて
始まりはいつも終末を考える切欠だったりもして

過去の悲しみの再来に
臆病になって
びくびくしたりもする

携帯の時計の数字は
一分にひとつ増えていくけど
心に刻んだダイヤルは
100mで大分と逆の方向に動くよ

人間なんていうのは
過去の積み重ねで出来ていて
想い出とか記憶とかが
心の半分を占めていたりもするけど
悲しい事も忘れる事で乗り越えるっていうのは
その過去とか想い出なんてカロリー燃やして
前へ明日へって進んで行くからなんだろうね

なんて歌うように文を紡いでいけたら素敵だなって
フィクションの林の底を泳ぐように
乱立した市街地の木々を潜り抜けてぺダルを踏み付ける




天国に行けるほどの徳も無く
地獄行きを選ぶ程の度胸の無い
私が住んでいる この煉獄の中で
だれかひとりでもいいから信じたいのに
だれも信じられない 臆病な人間不信者は
声にならない想いを叫ぶ
だれかの心の片隅にでも
届いてくれれば良いと叫んだ想いは
だれの心にも届かないで
空が終る高さまで響いた





手を伸ばしても大声で叫んでも
心臓が破裂するまで走ってもさ
到底届かない距離だからこそ
届くものだってあるんだって
そう想うんだけど どう想う?実際?


自由詩 低空飛行 Copyright 我辣波饅頭 2007-07-09 23:11:11
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