望月 ゆき

風船

つばめの急降下にも
動ずることなく
ただよう風に押されて
やがて 点
水面に映る丸い残像



滝 

世の中のすべての音を盗みながら
アピールするものは 
引力 あるいは 重力
無数の直線を描きつづける
気まぐれに
虹をたずさえて



シャボン玉

世界をさかさまに見てみたら
悲しみも 苦しみも
泡となって消えてしまった
高架線の向こうにいるであろう
誰かにも 見せたい



扇風機

主役にして脇役
脇役にして主役
顔面からこぼれおちたものは
風 あるいは 風
もう ぼくは
きみ無しには生きられない



風をそっと裏返すと
涼、涼、と風鈴が鳴く

こっそりと
夏の残り香をなつかしむ
ぼくのもとに
夏はまた
訪れようとしている


自由詩Copyright 望月 ゆき 2004-05-18 01:19:39
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