鍵穴から差し込む秘密
相馬四弦
遮らないで きっと今夜は
一番しあわせな夜
枕の下に隠しておいた物語を ゆっくり数えはじめる
硝子に爪を立てる夜露
姿見の中に立つ架空
天窓に踊る フクロウの毛繕い
壁一枚へだてて
夜の森に溶けてゆく
彼女のかぼそい嗚咽
天井から吊されたぬいぐるみ
私の額の上に浮かぶ真空を凝視している
隙間風が通り抜けると
キコキコと身体を揺らして
いったりきたり
そしてゆっくり回転して
ドアノブを見る
自由詩
鍵穴から差し込む秘密
Copyright
相馬四弦
2007-07-08 20:10:25