スイッチ
悠詩

スイッチを切るためのスイッチは
ヒトをあざわらって入れられたのに

気取って薬指を伸ばすと
完全試合を放棄した口が
ハイヒールを履いて
「わたしは左が凹んでいるほうが好きなの」
なんてほざいて
前頭葉の見せる
ぴんと張り詰めた糸に酔って

スイッチを入れるためのスイッチが
ヘソの下にあると知る前から
心は憂うべくもない飽和溶液の中に
置き去りにされていた
できの悪いマジックミラーで武装して

ごらん
ヘソの下の乳白色のランプが
発信音を奏でた時から
スイッチはもう右に引っ張られている

スイッチを切るためのスイッチを
入れた時には
心の着飾ったマジックミラーが
反転している

スイッチを入れるためのスイッチは
自分のものではないことも
傲慢と絶望に暴れているその心が
悲しく滑稽に映っていることも
知らずに


めしいになったその薬指で
もう一度
いま一度
スイッチを入れるためのスイッチを探せ
飽和溶液に心を任せたヒトは
不完全試合なんて望んではいない


自由詩 スイッチ Copyright 悠詩 2007-07-08 00:32:41
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