うたかたの宵
見崎 光

藍に鳴く瞬きは
添える程度の色彩
決して主張しすぎない声で
詠うように流れては
見下ろした先の草花に
願いを囁かせた

蒼に震える輝きは
漂う程度の色合い
妥協にも似たか弱い声で
謡うように零れては
配った目先の虫達に
祈りを呟かせた

軒端に揺れる笹の葉は
幼い手で奔らせた
不器用なまでの大きな文字を
落とさぬように敷き詰めた短冊揺らす
今宵の風は
どことなく繊細で
綿毛を誘うような弱い気流で
想いを上昇させていく

大人びていく夢は邪気を帯び
整えられた文字に綴られて
行き来する 光りと闇
無意識に秘めた純粋を
奈落へと追いやっては
哀しげに注ぐ水と裏腹に
背筋を伸ばし戯れて魅せた

雑踏を逃れ
虚ろに咲く花であり
影になびく草であり
急ぎ足を休める虫となる
無邪気に仰ぐ天の川
うたかたの宵




自由詩 うたかたの宵 Copyright 見崎 光 2007-07-07 11:21:03
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