Where are you from?
んなこたーない

サイドウインドを下ろすと、波の音が聞こえた。
半袖ではまだ肌寒い季節。
新聞が毎日のように失業問題を取り扱っていた、97年。
私は、サファイアの街を訪れたことがある。

清潔な食布、簡素な舞踏会。 
偶然知り合った未亡人は、同席したひとびとに向かって、シェイクスピアの詩を暗誦してみせた。
古い滑車とゆるやかな地下道、その余白をモネのひなげしが飾っている。
帰り道、私は彼女に花言葉をいくつか教えてあげた。

そうして、日々は緩やかに流れ去っていった。
毎朝、眠たげな陽射しに森は香り、正午になれば少年の水しぶき。
未亡人は、届かぬ便りと知りながら、今日も郵便夫の到着を待つばかり。

夜には、五月雨の速さそのままに、いつも星が足元で砕けた。
そのサファイアの破片は、夜が明ける前に、市の清掃局員が回収するのである。
ある日、部屋で「なしくずしの死」を読んでいると、まだ幼いSly Stoneが、私にShaggsのレコードを聞かせてくれた。


自由詩 Where are you from? Copyright んなこたーない 2007-07-06 17:10:57
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