瞼をなくした人々へ
狩心

真空に耐えられなくなった深海魚は新婚早々に鋼が滑り落ちたがドの音を♯とした夕暮れ時に三日月が暴れだして早く出せ早く出せという紅しょうがの上で踊る鰹節の工場見学には刃こぼれが激しい錆びた日本刀が的確に命中していた頭が真っ二つに割れて脳味噌をストローで啜るお婆さんがいつもそれを私に言い聞かせた耳にタコが出来るぐらいに

我々には柔軟体操が足りないと気付いた少年のそこはかとない孤独と産業革命から始まった機械音が輪唱となって絨毯の隅っこに居る鼠の親子を撃退したその時に携帯電話の充電が完了するのだが魔法のランプの悪戯によって部屋中に牛肉が詰め込まれた僕はもう身動きが取れない時代の流れに乗って商売を始めなければならない金を見る度に反吐が出た全ての穴から開放された魂の電撃が放心状態で沈黙し始める今日のお前らの地獄の熱気球

砂袋は落とされた股は破裂した人口爆発の裏側で人工呼吸が行われた爪が引き剥がされる余裕をぶっこいて引っこ抜く脊髄を走る耄碌じじぃのミニカーと液体の賛歌

十年または二十年と頭を掻き毟った髪形は崩れないままでハードにキープそうだろう固められた殺虫剤は粘々に溶け出した僕達のはらわた煮え繰り返って欲望が噴火する死火山の充血した目を見逃すな右!左へと反り返る急斜面の砂漠で直滑降のスキープレイヤーが空白をカットする断面図には小さな丸い細胞が一杯で指先で少し触れただけでプチンと弾けてイクラを想像させる回転寿司がもう俺達の目の前で回っている音速のF1サーキット!熱い思いかそれとも意味のない競争かそれもまた右!左へと僕達の急所を通過して轟音を鳴らす急停車の連続とスピンしてアスファルトに焼きついた傷跡の恐怖と興奮の快楽の中で妥協した全てが出目金または金魚となって縁日の水槽の中を泳ぎ出すアスファルト!

愛それもまた意味を持たなかったなぜなら愛を知る者が少な過ぎた自らを中心に添えなければ思考できない魑魅魍魎の呻き声が世界中に鳴り響いているからだ切断しろ自らの両腕をそして滴る液体が垂直に落下することを目撃するのだ一人も二人も変わらないのだから

生命のカメレオンが連続する魔球が坊主の崇高な米神を略奪した条件反射はもう役に立たなかった足の指先から広がる大地の枝とも根とも言えぬ血管の躍動と

お前ならどちらを選ぶ十年前に埋められたタイムカプセルと起爆装置をはずされた歴史の地雷と匂いを嗅ぐ事のみを許されたハイエナ達の呪いと平面が立体化した歴史の後に立体が平面に戻される輪廻と人類の二色化が進む古い論理の上で与えられた自由と闘争本能と

夢の続きを騒ぐこともなくなった湿気の強い昨年と同じ季節が来た今思い出す給水所のランナーの姿を汗と涙が一緒になっていたそこに水が流れた唯一つの思いを胸に秘めているからだ

電気を飲み込んだときの窒息または大量発生した巨大なバッタ達とのダンスを苦痛と共に受け入れて見え始める溶鉱炉の謎を解き明かす明日への連鎖を終わらせる為に抑圧か戦争か折られたくはないこの一枚の紙切れを生命と呼ばなければ私たちが紙切れになる

        *        *        *

地球の自転に人々が飲み込まれるとしても要らない物は要らないと言う必要があるもう嘘は吐きたくない肩幅が大きくなった女性の悲鳴と共に万里の長城がヒマラヤ山脈を囲い込んだ含み笑いの上で仰け反って両腕を回転させながら真空を掴もうと掻き毟った瞬間に時間が止まりそこから逆再生が始まるエンターティメントのニュース速報がノアの箱舟となって株価が上昇した会社を買収する泥酔者がボタン一つで核ミサイルを押せるはず!

人類が一日を24時間と定めて殿と姫が居なくなった原始人の発情期に似た両性具有が自分で自分の子を孕むように個人の中に工場的無機質な生産ラインと新興宗教の国家が成立して蜘蛛の巣を作ることが義務付けられた教育現場の裏庭でBダッシュする性病患者達が行ったり来たり死んだ振りをする太陽が暖かい記憶を幻として見せた時代

生命が尊いという言葉は倫理ではあるが事実とは反していたし真実として実証できるものではなかった人生の意味や万物の存在においても思想という思想がお子様ランチになってファミレスまたはファミコンで提供されるようになったのだが食事マナーや操作方法がよく分からないまま恋愛に没頭して紙飛行機でアメリカに渡った若者達の脱力的な音楽がホームレスに奇襲攻撃を贈与してありのままにありのままに残虐な忍耐と心をそして新しいものをという馬鹿げた発想と劣等感と優越感の狭間でカツアゲに遭うフリーター

「お金は持っておりません勘弁してくださいヴィーナス」
「僕の命は無料で配られた雑誌と求人広告なんです」
「貴方に迷惑を掛けないので私は私として生きて死なせてください」

そりゃ無理だねという言葉と共にうなぎの蒲焼の匂いが広がったファンタジーは今もなお青少年の神話になっているし私はいつまでも貴方と睨めっこがしたい欲求に駆られると懺悔した自給自足の農家の息子が本を読みすぎて大地の恵みと社会の発展を誤認逮捕した成れの果てが動物園の折の中に居る肉食獣達の虚ろな目でありそれを飼育する飼育員を噛み殺すのはもう時間の問題だ

        *        *        *

いつの時代も問題は何をするかだったその前に何を思うかであり何を思わされているかでもあったその前に

敵と味方の区別も出来ない貴方が肩を落として愕然としている記憶を弄んでいる

もう少しで貴方の体が貴方の心から逃げ出すだろう
三つ数えて振り向けばそこに貴方がいる
何処かで見たような顔だお前は誰だ私は誰だ無我夢中で駆け出したその前に

        *        *        *

自転を繰り返す青い地球儀が荒れ狂う運転手達の横腹にブランディを注ぎ込んで交通事故が多発する意思の伝達は電気自動車の中で極まった!

ガソリン 私たちは屍で走った 戦争はもう忘れた
ソーラーカー 私たちは太陽を虐待した
− 社会の復興と共に表現は死んだ −
水で走る 私たちは自らの生命を差し出した

電気人間と水人間が握手をして二人とも死んだハロー


自由詩 瞼をなくした人々へ Copyright 狩心 2007-07-06 12:50:40
notebook Home