空中の 地上の ものたち
モーヌ。




グスターフは 静かに 時を 待って いた

湾口の 砂州は 彼の ふるさと で

きょうは どうしてか

鼓笛隊が 空を 横断 して ゆくよう だった





お祭りの 日の 鳥たちが つどって

( あれは いったい 鳥 なんだろうか... )

つや つや と した 毛並みの 鳥が いたり

漆黒の ひとみを きら きらと させたのも いたり





じっと まぼろしに 見える 20フィートの つばさに

風だまりを つくって 息を ひそめて

はりつめて 緊迫した 時を 結晶 する

“ さよなら へんてこな きみ... ” みんなは 飛翔 した





グスターフは 親愛を おぼえながら

名乗り あわなかった はらからの 彼らに

ついて ゆこうと した

いま 飛ばなければ 飛べなかったが ゆえに...





グスターフの 右の つばさは 不出来 だった

グスターフは 墜落 して しまった

グスターフは 白い 仔山羊を 抱きしめながら

かなたへ みんなの 出発を 見送った





鼓笛の 鳴り止んだ 空

跡は にごりも その 痕跡も 残さなかった

グスターフは トコトコと 砂洲原を 駆け 回った

ひとり 静かに まぼろしの つばさを 夢に 見ながら





進化を 遂げた 鳥の ような みんなは

目に なみだが たまる くらいに

空の 高みで 呼吸が 苦しくなるときが あった

もう みんなは みんなで 帰れない のだ





ふるさと星の 半島の つけ根の 砂洲を 見ると

なんだか 赤く 燃えた 小さな 火が

ちょこまか 動いて いる

名乗り あわなかった けれど あれは あの へんてこだ...





ひとり ひとりの みんなは おもった

へんてこに 手紙を 書かなくっては... ありがとうって...

しかし だれも すぐに 雑多に まぎれて 忘れて しまう

グスターフに ひとつも 手紙は 届かなかった





昼も 夜も グスターフは 気が つくと

砂洲原を トコトコ 助走して 駆け回って いた

きょうこそは 飛んで 見せると 信じ ながら

恩寵の 炎の リングが 頭で 燃えているのを 知らないで











自由詩 空中の 地上の ものたち Copyright モーヌ。 2007-07-06 06:55:56
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