縦書きの理由
楠木理沙
こんな拙い言葉では 届かないかもしれない
だけど だからこそ
あなたが視線で追った わたしの一つ一つの言葉が 一行一行が
そのまま浮き上がって 瞳を通して 身体のどこかに 直接流れ込むように
それは決して 脳でも 心でもないところ
あなたという存在が その存在を 存在とするところへ
不時着でかまわない 傷を負い 埃にまみれようと
それが そのときすでに 「言葉のようなもの」へと 成り果てていようとも
だからわたしは 縦書きで あなたに言葉を贈ろう
決して 横滑りしないように
あなたの どこか深くに届くように