月刊「動物園」
あおば

               07/07/05

驚いた!
変わったわね、
と言われて
鏡を見たら
知らない人が
こちらを見ている
顔を盗まれたのかと思ったが
盗まれたのは記憶のようで
顔自体は昔のままで
笑いを失い
気が抜けたような
惚けた顔
痴呆が始まったのかと怖くなり
気合いを入れて
”動物園”と大きな声で叫んだら
なにをやっているの
人が来るよと諭されて
盗まれた記憶を入れ替えようと
予備のメモリーチップを差し込んで
リセットボタンを押したので
一昨日のレベルで復帰した
やれやれ一安心と
お茶をして
別れたあとで
月刊「動物園」を渡すのを忘れてたのを思い出す
この記憶は短期記憶であったため
バックアップメモリーには保存してなかったようだ
電話の内容はすべて長期記憶できると書いてあったのは
嘘のようで
オプションの付かない安いメモリーに特有の誇張宣伝に飛びついたのが悪かったと改めて自戒する。
盗まれたメモリーは泥棒市を探索すれば見つかるかも知れないが、時限装置付きなので、今頃はリフレッシュされているだろう。
雨が降らない動物園にもニューバージョンの夏の動物がたむろして短い夜を謳歌しているみたい。


自由詩 月刊「動物園」 Copyright あおば 2007-07-05 22:08:32
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