夜と雨
木立 悟




雨が地を
音はまたたき
山から空へ照り返す


空白の主人あるじ
空白を置いて去り
空白は 家になる


雨のための唱があり
夜をしずくのかたちにひらき
あやすように照らしている


主人のいない庭をすぎ
わずかに残る道をめぐり
風は空白のかけらを抄う


家には窓があり
しずくの流れたあとがあり
影がひとり住んでいる


音は昇り また降りて
緑も水も触れない土を
冠のようにかがやかせてゆく


唱を抱いて雨は去る
家も庭も消えてゆく
影は主人を待ちつづけている












自由詩 夜と雨 Copyright 木立 悟 2007-07-05 19:53:41
notebook Home 戻る