星を
水在らあらあ


?.


星を
呼べるんだね
あのロバ
ほら
また流れたよ

願い事三回は
いじわるだね
静かにしていよう
叶わないよ なにも
どうせこれ以上

たどり着こうとして
燃え尽きたら
かがやいて
なくなるから
さよならも
ないね
一瞬だけ
焼きついて

マルガリータがたくさん
星屑のように
おまえの裸足は夜露に濡れて
蒸しパンみたいにふやけて
それでも流れ星が欲しいから
おまえはじっと
蟻に噛まれたってじっと
まっすぐに
空を見ている

鞄の中には
閉じたナイフと
パンとチーズ
たくさんの色鉛筆が
からから鳴って

帰ろうよ もう

なあ




?.

水と
水と
水を
留める
大地と

おまえのこころが砕けて
ウイスキーに波紋をつくる
飲み干して
流れて
つま先から
つたって
おまえの膝を濡らして

誰もが
恐ろしいほどの愛を持っていて
それを使い切れないでいる
それが俺たちの
不条理な銀河で
神様は
どうしようもなくて

俺は
疲れたよ
おまえの涙と
俺の血に
毎朝モップかけながら
おまえの朝食に
卵を割って
フライパンはいつも焦げて
モッツァレラは
いつも嘘で

ここはどこだ
おまえの世界か
俺は教会に行くから
一人で行くから
この土地の
十字の切り方をもう一度教えてくれ
祈り方を
話がしたい
話がしたい

大地からは
花が咲くから
どうしたって
おまえはいつでも花に囲まれて
キラキラした目で
世界は
かがやいて

死ね
死んじゃえ
死んで
お願いだから
あんたもう死んで
そうして生き返ってこないで
もう一度なんて
嫌だから

水からは
何も生まれないのね
でも水は愛して
触れてゆくすべてを愛して
私だって愛して
私だって
そんなに撫でて

大地と
水は
野生の薔薇も咲かせて
それを俺は
見ていられなかった
知っているか
あの花を

ふざけんじゃねえ
ふざけんな
わかってくれ
わかってくれ

わかってくれ
わかってくれ
わからないのに
そんなに泣くな
そんなに叫ぶな

ナタリアが来て
クレモンティーヌが来て
ゲイランが来て
ジュリーが帰って
おまえが来なくて

どんな体だ
どんな家だ
どんな都市で
どんな社会だ

ここにあるのは
拾った木の実と
閉じたナイフと
たくさんの色鉛筆と
おまえの髪留

この髪留めの
この銀色の曲線に
おまえはいたんだ
おまえはここで
笑ったり泣いたりして
生きていたんだね





?.



星を
呼べるんだね
あのロバ
ほら
また流れたよ

マルガリータがたくさん
天の川のように
おまえの裸足は濡れて
蒸しパンみたいにふやけて
それでも流れ星が欲しいから
おまえはじっと
蟻に噛まれたってじっと
まっすぐに空を見ている

そしたらあげるよ
ほら
此処に来る前に
俺たちが拾った
この木の実は
一個の星で
それは俺の心臓と一緒で

おまえを愛して
おまえを撫でて
永遠に
遠ざかってゆくから

銀色のポットに
埋めて
テラスの一番日当たりがいい一角に
おいてやればいい



なあ だから
風邪引くから
もう帰ろうよ
なあ 

帰るよ





?.



星を
呼べるんだね
おまえは

また一つ呼んだね
もう帰ろう

なあ もう帰ろう



流星がいくつも突き刺さって
輝いて 血を流して


それが俺だ

おまえが 愛して

おまえが 失くした













自由詩 星を Copyright 水在らあらあ 2007-07-05 09:28:22
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