来世
ロカニクス
カレンダーの塗り潰しすぎにより
よし子の来世もしくは永遠
それは壁になった
よし子が生まれたのは暑い日だった
怠惰をまとった団扇の風がピタリと止み
それがよし子の生まれた証になった
ベッドの中での五歳夢は五つあった
一つはお嫁さん
二つめはお花屋さん
もう三つめは子犬
四つめはチューリップ
そして五つめはきれいなお城
それからも決して
壁になりたいと思ったことは無かった
だからこれから先のよし子は
悲しいよし子になるのだろう
生まれたときと同じ病院
知らされたよし子の親は目を閉じた
そこによし子がいた
よし子は塗り潰してきたカレンダーを折って
船と飛行機を作った
よし子の生きてきた証は
よく沈みよく飛びよく浮いてよく落ちた
どうかきれいな壁になって
たくさんの人にたくさん会って
よく喜んでもらえるように
そう祈ったのは
他ならぬ彼らだった