水晶の天ぷら
小池房枝

紫水晶のかけらを
油で揚げてみたことがあります

天ぷらが食べたかった
わけではなくて

シトリントパーズって
実は加熱処理したアメジスト
というのを試してみたくて

ホイルを開くと
紫水晶のかけらは
見事に白濁していたのでした

温度が足りなかったのでしょう
もう一度
生まれ直すためには

元、紫水晶である処の石英は
机にしまい込まれてのち行方不明

今頃はきっと何処かで
石は石としての在り方と時間の中で


自由詩 水晶の天ぷら Copyright 小池房枝 2004-05-17 01:30:55
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