陰影
千波 一也


たのしそうに語る
あなたの足跡を
みつけた

わたしの庭には
しばらく無い、
かげ


不本意ならば
どうぞ消し去りなさい

あなたの好きな場所を
汚すつもりなど無い

そんなにも
遠ざかるなら
言葉がさらされ過ぎて
あわれです

誰に向けて、
なんのために、
どんなこころ持ちで、
あの置き去りを
みつめていますか


わたしは単純に
待っていただけです

あなたが
夢中でかざす
そのひかりの一つでいいから
わたしの肩にも
ください、と
待っただけ

月のあかるさに
凍える声は研がれたままで

ずるいと言えばずるい
そんなわたしかも
知れないけれど


暗いところにあれば
ただただ染まるばかりです

沈黙が
長ければ、なおさら


笑顔はすてき
よろこびもすてき

けれど
おなじ分だけ
かなしみも寒さも過ちも
すてきなことだと思います

あなたも
うたを奏でるひとなら

照らしてください

あなたのなかの
指と
夢と
本と

わたしがまだ
そこに並ぶのならば

いいえ、
並ばないとしても

その手で
その手にしか負えないものを
わたしは望みます

つなぐ、でも
捨てる、でも

つくる、でも
やぶる、でも

このままよりは
ずっといい

このまま
よりは


怒りではなく
憎しみでもない

これは、そう、
迷いのうた

わたしの知らないところで
別のわたしが生まれていないだろうかと
背中を
背中に
つたえるうた

荷を分け終える
そのまえに







未詩・独白 陰影 Copyright 千波 一也 2007-07-03 12:12:53
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