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おるふぇ

父が咳をした
ここのところ体調を悪そうにしていたから
「大丈夫かな」と思った
声には出さなかったけれど

母が布団を干す
ここのところ腰を痛そうにしていたから
「大丈夫かな」と思った
声には出さなかったけれど

姉が仕事に出掛ける
弟が学校に出掛ける
仕事は順調かな
勉強は順調かな
ここのところ忙しくて
会話なんかなかったから
「大丈夫かな」と思った

僕は詩を書いている
呑気に空を見上げて
それを大事そうに保管して
次の新作へと取り掛かる

馬鹿な僕でも
この日常を微かに
永遠に続かないものだと
どこかで感じ取っていて
時々は家族を想う

いつかは
何もなかったかのように
きっとこんな平凡な
ありふれた一家族なんて
消えてしまうんだろう
この空の下から

それでも
僕ら家族のみんなは
毎日のように
この家に帰り
この家から出掛ける

そう思うと
とめどない無常感に
普段は忘れている
感謝なんてものを
思い出すことになる

「ありがとう」
そう思ってるんだ
口には出さないけれど

何ができるかな
何もできやしなかったな
それなのに詩には
愛とか
希望だとか
大層なことを書いて
何もできやしなかったな

伝える
伝わる
人間同士の営みなんて
そんなものの繰り返し

急に僕が面と向かって
「大丈夫?」
「ありがとう」なんて
言い出したら
気持ち悪がって
熱でもあるのかと
心配になるだろう

意外なことに僕だって
身近な恩恵を感じていて
親孝行という言葉にだって
たまには思考を巡らせる
何ができるだろうか
大きなことはまだ
難しいだろう

だからせめて
笑顔でいようか
一番身近な人に
何もできないなら
もっと遠い人には
何もできるはずがない

だからせめて
笑顔でいようか
そんな簡単なことで
明るくなれるならば
今更だけれども
今からでも
笑顔でいようか

この世の中には
あんまり恵まれていない人もいるから
僕らは充分に幸せで
それでもそれは細やかで
だからせめて
眉間の皺や
しかめ面を減らして
もう少し笑顔を増やそう
そんな小さな幸せを
もう少し大切にしよう
と、詩に書いてみよう


自由詩 ホーム Copyright おるふぇ 2007-07-03 06:42:26
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