梅雨空
山中 烏流

層になった雲が
ゆっくりと、重さを増して
僅かに酸を帯びた
涙を流す頃
 
私は
地に足をつけながら
それを、一粒ずつ
掬いとっている
 
 
指で跳ねる雫に
唇を寄り添わせる
少し、ピリピリとして
痛い
 
雲の悲しみを
汲み取ったあとのそれは
水晶のように透き通り
とても、綺麗だった
 
 
傘を叩く時の
小さく響く音が
耳から、離れない
 
空を見上げてみる
一筋の光もない
その様子は、まさに
 
 
 
 (水溜まり
 (波紋
 
 (広がる
 
 
 
更に、重さを増した
空をじっと
見つめてみる
手を、伸ばす
 
頭を撫でようにも
どこが、頭なのか
 
わからないので
とりあえず
目の前を撫でてあげた
小さく、震えていた
 
 
 
刹那
 
泣き声が、聞こえた。


自由詩 梅雨空 Copyright 山中 烏流 2007-07-02 11:55:30
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