寂寥
智鶴

生きることを拒むには
この場所は少し寂しすぎて
僕は死ぬことに
ほんの少しだけ恐怖を憶えた

喜びと哀しみと
憂いと切なさと
そして怒りや嘆きの類さえも
此処ではそんなものでさえ無益で
何かを求めていることだけが在った

非情なまでに何も無い此処で
僕は何かを抱え過ぎていたようだ

生きる為に此処に生まれ
そして死ぬ為に此処に生きた
喜びを得る為に死を望み
哀しみを紛わせる為に生を嘆いた
優しい痛みを与えられて
僕はきっと自惚れていた
何もかもを知っていたのに

ただ、投げ与えられたかのような命に
必死に名前を刻み込んだ
その必要さえ此処では無意味で

眠ってしまおう
此処は少し寂しいから


自由詩 寂寥 Copyright 智鶴 2007-07-01 23:42:21
notebook Home