カラメル岬にて
楢山孝介


カラメル岬に家を建てて住んでいる
からまる君のもとに
こんがり山からとんがり君が逃げ出してきた
住んでいた山が焼けてしまったのだと
黒焦げになってもう帰れないのだと訴えてきた
からまる君はとんがり君の話を聞いて
しばらくはうちに置いてやると請け合った
ただしばらくしたら出て行け、と突き放しもした
とんがり君はありがとうありがとうと言って感謝した
君だけはいつまでも変わらない友達だと泣いて喜んだ
だけどからまる君にとっては
とんがり君の涙などどうでも良かった
昔の知り合いだった気はするが
実はあまりよく覚えていなかった
何か盗みそうな素振りでも見せたら
ぶん殴って殺してやろうと考えた

からまる君は最近気にしていることがあった
陰毛に白い毛が一本混じっていたのだ
鼻毛に混じっていた時はあまり気にしなかったが
陰毛に白いものはまずいんじゃないかと思った
一物を存分に振りまわすこともしないままに
もう男として衰えてしまった気がした
数少ない昔抱いた女の中に
陰毛が半分がた白い女がいたことを思い出した
まだ若い女であったのに
肌に張りもあったのに
驚くからまる君に女は笑いかけた
「多いよね」と笑いかけた
からまる君はその女に急に会いたくなったが
顔も名前も思い出せなかった

とんがり君はハンモックの上で寝かせた
夜中うるさくしたら殴るからな、と言い聞かせた
ありがとうありがとうありがとう
何でもいい、ここに置いてくれたのだから
とんがり君は本当に嬉しそうに言うのだった
またも泣きながら言うのだった
俺とこいつはかつて親友だったのだろうか、と
からまる君は昔のことを思い出そうとしたが
すぐに思いは陰毛に向かい
この一本の白いやつを抜いてみれば
昔の女とまた出会えるかもしれないな
と根拠なく思った
思っただけで抜きはしなかった
とんがり君のいびきはひどいものだった
からまる君は三日間我慢した


自由詩 カラメル岬にて Copyright 楢山孝介 2007-07-01 12:25:02
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