波間の住人
千波 一也




揺れる、
ということを
幾度も揺れながら

風景は、
まったくとおい
わたしで
あった


えがかれてゆく、海

まっ白なのに
それはもう
古いかげ

波が
うたがい、過ぎて、
まぶしさに眩む



わたしの
はかなさは
たとえば枯葉のさいごのような、
くずれぬ声を
持たぬ
こと

はざまに、
ただ、はざまに、

置き去りではなく
取り残される
でもなく

ひとつに定まらない
その、
ひとつについて
あまりにも
やわらかに
すみたがる



かぞえ忘れた夏の日、は
絶えることのない
水たちの
文字

いくつでも
失うことではじまるけれど

おそれ、

たやすくはないことばの眠りに
ひかりを満たす


迷子のように、

すでに
まもられ









自由詩 波間の住人 Copyright 千波 一也 2007-06-29 19:58:48
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