誘われし澤の奥で
モーヌ。
な ぐ り...
名栗村 そして 澤
やみ夜を 求めずとも えられる
その 名まえを 記す ことは
もはや うたの なかの 出来事
うたに 遊ぶとき それは 消えて ゆく
6月も 終わろうと して いた
その頃 だけの 繚乱を 追い かけて いた
( いつでも 出会える ものでは ない )
ほたる まします
ほう ほたる
つゆはらいの うたごえ が
淡い 宙の けもの道を 照らし ます
数多の 虚数が おのずから ひかり
たましいを 呼び あって
かれらの 対話を くぐり 抜け
ぼく と ほたるたち と
あたりは 都市の 薄明を のがれ ゆき
やみを もって 雄弁に さざめいた
澤の 身使いが かぶって おります
夜の つばの おおきな 黒帽子の うえに
ほたるは まします
ほう ほたる
やみを はらう あふれかえる 孤児たちが
磨かれた 白羽と なって 待機 して
すこし ずつ すこしずつ はばたいた
ファンタズム から 現実の ほう へ
ほたるは ゆきます
ほう ほたる
かれらは 双生児たち だった
絶望 と 希望 と
深き 傷の ひかりで 浮き あがって
瀬音 立ちます 幽暗を ( いつも )
何かを めざして さまよった
語りかけ うる ひびき へ と
身を 燃やし 尽き ながら
可視的に ことばへ... と けものの道 が
おきざりの 胸のなかへ と 継がれて ゆく
伸びて ゆく こころの道 を
いちわの 残光する 野うさぎが
ぴょん ぴょん と 跳ねて ゆく
もの みな うたに
うたに なるまで