砂の彫像
なかがわひろか

砂漠の砂でお城を作る少女がいた
お城は少し難しいから
山を一緒に作ろうか
そういうと、少女はにこりと笑って頷いた

私たちは少女の背丈くらいまである山を作って
真反対から穴を掘り進めた
途中山は崩れそうになったが
砂には少しの水を混ぜて丈夫にしておいたから
崩れることはなかった

私は少女のペースに合わせてゆっくりと
穴を掘り進めて行く
少女は爪の中に砂をぎっしりと埋めながら
穴を掘り進めて行く

手と手が出会う

温かい

少女はまた私を見て
にこりと笑った

少女はいつまでもずっと山の中に腕を突っ込んだままだった
私はいい加減疲れてきたので
そろそろ帰りましょうと言った
少女はいやいやをするように首を振る
私は少し怒ったようにもう一度だけ言ったけれど
少女は聞く耳を持たなかった

朝になって
私は山を作った場所を訪れた
少女は一晩吹き荒れた砂嵐に体を取り巻かれ
砂の中で固まってしまっていた

私は彼女の体だけを取り出した
後には彼女の体を象った砂の彫像が残った

私は山の上にずかずかと昇り
一度思い切りジャンプをした
山はあっさりと崩れ落ちた
少女の彫像も
バラバラと崩れ落ちた

(「砂の彫像」)



自由詩 砂の彫像 Copyright なかがわひろか 2007-06-29 02:17:06
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