猫缶
水町綜助

朝になって
公園の湿った土の上に突っ伏していたんじゃないか
雨が上がってむかえる朝のにおいは
ひやりとした黒い土のうえ
収斂していく類のもので
奥に深く潜っていく
噎せ返る速度ににて


体の中に固く黒い毛並みの猛獣を飼っている
その
ようで実は描かれた
かわいらしい
黒いまなこの
がおうとなく
ぬいぐるみ

それをいまだ突っ伏して人差し指でつついてくるくると回せば
やっぱりがおうとなく
鳴くよこれ
仕掛けだよ
つくられた
わざわざ
ぜんまいを巻く種類の
やつだ
それを
巻いて
ぱっと手を離して
動き回るのを見ている
鳴いているのを口を開けてみている

その時の
離した手の
あいまいな
無意味と
ゆびのひらきかた
それが僕で
ほらちょうど薬指の先あたりに
背景がめくれた扉があって
きゅ
とつまんで開いてみれば
そんなものただ猫缶の蓋だから

打ち捨てなよ朝のつめたいかがやきの中に
土の細かなおうとつすらも彫り透かすような
彩度の低いすんだ光の中に
黒い土に
中身を空ければ
たぶんじゅんすいに輝くから

遊具が錆びていくなかでも



自由詩 猫缶 Copyright 水町綜助 2007-06-29 01:56:40
notebook Home