不確かな公案
あおば

                 2007/06/28 

 
 ブラックライトアップ同盟

Wikipediaによると、
日本のライトアップの嚆矢は
1963年神戸ポートタワーだという。
照明学会照明普及会賞を受賞したから
公式の記録もデーターもあるだろう。

1980年代になると、
東京タワーのライトアップでも有名な
石井幹子(もとこ)さんが活躍し
実用一点張りで無骨で粗野な
退屈な建物も夜になると美しく蘇り
その魅力は例えようもなく新鮮で
我も我もとライトアップを試みて
妻に内緒のへそくりを盗みだし
我が家の入り口にもと貧弱な投光器具を設置して
近所の悪ガキどもの破壊衝動吸収用の恰好の的となり
小石を投げつけられて割られてしょげた、
そんなことを経験した貴男は夢を描くのも下手な
真似しっこの呆け茄子と綽名され、昼間の時間は恥ずかしくて屋内に引き籠もる。
そんな経験有ったでしょうと決めつけられてライトアップが嫌いになって
ブラックライトアップ同盟を結成しようと同志を募る。

同盟規程(案)
1.暗い夜道には気をつけないといけません。
2.自動車が走る道には気をつけないといけません。
3.色を混ぜるには調光装置付きの灯光光源を準備する。
4.灯光器具は雨が降っても大丈夫な耐候性も備えなければなりません。
5.遅くても夜中の12時には消灯するようにしないとエネルギーの無駄遣いとそしられて次年度以降の補助金をカットされる恐れがあります。HID照明灯は寿命が約1万時間程度ですから、メンテナンスの費用も準備しなくてはなりませんが我が社のLED光源を採用すれば4万時間はメンテナンス不要ですから10年間はライトアップが可能ですと、脳内宣伝隊が真っ暗な夜空に赤色の江戸花火を打ち上げて覚醒を促した。
6.ライトアップの担当になってからは夜になっても頭の中が明るくて睡眠障害で困ってます。
7.条項の改正は全会員の1/2以上のの賛成を要す。
8.前項は2007年6月25日21時00分以降有効。




 角兵衛獅子


無印の光が目を覚まし
褐色の罅割れ大地を走査して
角兵衛獅子の少年少女
半回転の繰り返し
無限の宇宙の蓋を取る

ほお紅の色鮮やかに
十重二十重の大軍を
振りほどき駆け抜ける
見たこともない快感

光あるところから
光のないところに
真っ黒な豹が
音もなく身を翻し
柔らかに伝送する
不確かな公案




自由詩 不確かな公案 Copyright あおば 2007-06-28 20:43:08
notebook Home 戻る