太陽の苦悩
宮本 心


― 太陽は人気者でした。




 それはそうだよ

 だって、僕がいなくちゃ生命そのものが存在しないんだから。


 見てごらん

 みんなが僕を慕ってる


 作物が育ち、土壌は豊かになり、

 大人達は僕に感謝するんだ

 運動会だ、遠足だと

 子供達は何かと

 てるてるぼうずを作って僕を求めるんだ



 だから

 僕は一生懸命輝くよ


 身を焦がしながら

 一生懸命輝くよ


 みんなが僕を待っているんだ

 毎日毎日

 みんなの為に

 一生懸命輝くよ






 晴天が続くある日

 みんなの態度がコロリと変わった




 川は干上がり

 作物は枯れ

 みんなが僕を恨めしそうに見ている




 どうしたの?

 そんな目で僕を見ないでおくれよ




 遂に人々は雨を乞い始め・・・・

 みんなが口々に呟きはじめた

 「晴れが続くと災難だ」
 
 「どうしてこんなに日射しが強いのかしら?」

 「紫外線には注意しなくちゃ」

 「異常な暑さで昼間は外に出たくないよ」と・・・





 僕はハッとした

 みんな、僕を必要としてくれていたけど

 みんな、僕を好きなわけじゃなかったの?




 あんなに晴れを願ってくれたのに・・・

 あんなに僕を求めてくれてたのに・・・ 

 僕の紫外線は昔から変わらないのに・・・

 気温が異常に上がったのは僕のせいじゃないのに・・・




 僕はただ必要なだけだったんだ

 みんな、都合のいい時だけ僕を呼んだだけだったんだ





 ごめんね、みんな。

 僕は、勝手に人気者だと思っていたよ

 だけど、僕ががんばれば

 みんなが喜んでくれると思っただけなんだ。




― 太陽はしくしく泣きました


― 雲に隠れて一人でしくしく泣きました










































  人々はそれを恵みの雨だと喜びました


                      

  人々はそれを、恵みの雨だと喜びました







自由詩 太陽の苦悩 Copyright 宮本 心 2007-06-27 10:38:18
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