夜はふたつ
木立 悟




道を割る五つの草の上に
頭と両手と両脚を乗せ
冷える音を見ている間に
夜はふたつすぎてゆく


色の名を持つけだものが来て
建物を貫き 声を曲げ
闇のなかの虹
寒さの粒を吹いてゆく


線を結ぶことで生まれる匂いが
星座の行方を追いやっても
もの言わぬものは草にひらき
星より永い花にひらく


ただ傷だけを舐めつづけ
赤く細く生きながらえる
己れのなかをゆくわずかな声
雷光と弱さにたなびいている


風と葉脈がつながって
消え入るように土に触れるとき
言葉は流れ 流れ流れて
水よりまばゆく海を示す


すずしさとしずけさとふくらみのなか
かがやくものらの重なりのなか
目を閉じ見つめるたましいを
夜は幾度もすぎてゆく

















自由詩 夜はふたつ Copyright 木立 悟 2007-06-27 09:40:54
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