夜はふたつ
木立 悟
道を割る五つの草の上に
頭と両手と両脚を乗せ
冷える音を見ている間に
夜はふたつすぎてゆく
色の名を持つけだものが来て
建物を貫き 声を曲げ
闇のなかの虹
寒さの粒を吹いてゆく
線を結ぶことで生まれる匂いが
星座の行方を追いやっても
もの言わぬものは草にひらき
星より永い花にひらく
ただ傷だけを舐めつづけ
赤く細く生きながらえる
己れのなかをゆくわずかな声
雷光と弱さにたなびいている
風と葉脈がつながって
消え入るように土に触れるとき
言葉は流れ 流れ流れて
水よりまばゆく海を示す
すずしさとしずけさとふくらみのなか
かがやくものらの重なりのなか
目を閉じ見つめるたましいを
夜は幾度もすぎてゆく