クトヌエアルカージ
黒川排除 (oldsoup)

凶と出よ地上百メートルの長箱

指紋消して他人の庭を跳ね歩く

港の突端あるいは渦巻くプランクトン

農夫立つ雨後の田舎に真っ黒に

近眼にクリーム自ずから尖る

シャツの下に死ぬまでずっと肩を飼う

塵も積もれば演奏家となり耳つんざく

大仏から油の幻垂れてくる

さまよいなれて靴底は行程の一部

カナリア後妻に据え左に回せば抜ける

白壁に古墳と民謡歌手の影

同じ行儀のみんな窓開けゴムの匂い

手の内に今日の昼 まっすぐ歩かねば

膨大な塩に押し出され処方とす

戸締まりよく二度目の笑みは老後くる

最上階から氷落とす何かをほどいてきた指だ

谷底から鉄塊の黒さ這い上がる

水買いに空より若いビン持って

計算上の雨期に計算の跡残る

吸水機うごく 盆地は想像にまかせる

ドレスから化石まで串で刺し佇む裸婦

暮れ損なった方の空に赤い花ちぎる

思弁の六つ紐を靡かせる軽い風

舟溶けていくあてもなく流されていく

早朝五時の烙印押して長い坂道

そっと出した手を指差し笑うたった一本の手だ

朦朧と我が名に赤含まれ神棚

市が平らに見える島海より出でよ

取り違えた子の拒絶 静粛に山脈

折れるほどクレヨンで塗る熊の内側


川柳 クトヌエアルカージ Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2007-06-27 01:33:52
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