うさぎはおおかみの上着を着て
おおかみの上着の上から
うさぎの上着を着て
うさぎの上着の上から
おおかみの上着を着て
ほっと一息ついて
コーヒーショップなんかで
おおかみの上着を脱いで
うさぎの上着になって
また歩き出すのでおおかみの上着を片手に
寒いのでひつじの上着を探しにデパートで
ショッピングして
帰りにおおかみの上着を持ったまま
ひつじの上着を着て
ひつじの上着の上に会社に行くときには
猫の帽子をかぶって
念のためおおかみの上着をもう一着羽織って
うさぎの上着を着る
着膨れ
て倒れる駅で
おおかみの顔をした人が呼んでくれた
病院に運ばれる救急車の中で
は親指を隠しておくべきか迷いつつ
親指を守るように指々を
閉じるが一緒に目も閉じかけていて
言いたかったことも
息も吸えない
うさぎの顔をした救急隊員が
ふたりがかりで
うさぎのうさぎの上着を脱がせようと
悪戦苦闘し
その下のおおかみの上着ごと脱がす
引っかかった猫の帽子もはずして
むくむくのひつじの上着をやっと脱がせても
ファスナーが見えるので
汗だくの救急隊員はすばやくうさぎの帽子を脱いで
傍らに置き
ヤギの顔をしている
うさぎのひつじの上着をえんやこらと脱がせて
でてきたうさぎの上着のボタンを
はずしてうさぎが出てくるが
やっぱりボタン
うさぎの上着だ
その頃うさぎの親指を握り締めていた手が
力なくだらんっと落ちて
救急隊員のひとりは酸素マスクをはめる
うさぎの上着をもうひとりが慎重に脱がすが
おおかみに引っかかって

気がつくと病院のベットの上
たくさんのきぐるみ
腕につながった点滴
少し怖い
ライオンの顔を隠す