長雨の後に
山中 烏流

雨色の空気が
私の奥をノックする
深く吸い込んで
吐くだけの、仕草
 
名も知らぬ花に
小さく声をかける
雨音はもう
とうに止んで
 
 
水溜まりの上を
わざと歩く
波紋が広がっていくのを
私はただ、じっと
見つめている
 
結露した
意味のないポールに
指を這わせながら
ただ、じっと
 
 
 (目を閉じると
 
 (湿った匂いが
 (した
 
 
傘を開いても
水滴がしたたるだけで
そこに、心地好さは
感じない
 
くるりと
一つ回してみる
螺旋状に飛び散ったそれは
まるで泡沫のようで
綺麗だった
 
 
鳥は
 
さえずりを潜めて
 
 
暗く淀んだ空に
気付かれないよう、そっと
視線を向ける
笑みを溢す
 
たまにはこんな日が
あっても
いいかもしれない
そう、囁いて
 
 
空も
 
笑い始めた。


自由詩 長雨の後に Copyright 山中 烏流 2007-06-26 11:18:27
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