セザンヌ賛
鈴木カルラ

あれは、テレビでゴッホの贋作のニュースを見ていた時のことでした。

アナタはいいました。
「セザンヌの贋作はほとんど無い。セザンヌの絵を贋作することは不可能に近い」
なんのこと、ゴッホだけじゃなくて、ダリだって、フェルメールにだって贋作はあるし、だいたい贋作のできない絵なんてあるの?

アナタはいいました。
「ゴッホの絵は目でみるが、しかし、セザンヌの絵は脳でみる」
脳でみる? 絵は目でみて、それを脳が感じるものでしょう。ゴッホは目でみて、セザンヌは脳でみる?おなじじゃないの?

アナタはいいました。
「燃え上がるような色彩の絵、人はゴッホの色彩に魅了される。美しい色の調和によって生み出される絵画は、みる人を虜にする」
そうです。人はゴッホの色彩に魅了されます。それを目にした人は、みな虜になってしまいます。

アナタはいいました。
「確かにゴッホの絵画は美しい。間違い無い、でも、美しい色をつかって美しい色彩表現することは、いってしまえば当然のこと。しかし、セザンヌの光り輝く絵は、色彩は違う」
えっ、どうゆうこと、セザンヌはちがうの? セザンヌは普通じゃないの?ゴッホもセザンヌも同じように美しい絵でしょう。

アナタはいいました。
「セザンヌがキャンバスに塗りつける色は、ゴッホのように美しくない。近づいてみたら、それらは泥のように濁った色でしかない。しかし、その泥のように濁った色が、適度な距離をとることで、まるで幻覚でも見ているかのように光り輝き出す。絵が、色彩が光だす」
そう、私はみました。それは不思議な幻覚。濁った泥のような色が、光り輝く瞬間。それは、人がセザンヌの絵を脳でみた瞬間。

アナタはいいました。
「そんな絵はセザンヌにしか画けない」

アナタはいいました。
「濁った泥のような色を光り輝く色彩に変貌させるようなことは、誰にもできない。数多歴史上に現れた天才達にも」

アナタはいいました。
「それを知った時、人はセザンヌの創り出す絵画に、色彩に、そこに神の輝きをみる」

アナタはいいました。
「セザンヌの絵画は神の領域にある」


アナタは画家
私にはそのことがどのぐらい凄い事なのかわかりません
でも、セザンヌの絵を脳でみる瞬間を知ってしまいました
だから、また、いきましょう、美術館へ
濁った泥のような色が光り輝く瞬間をみるために
アナタがいう神の領域を 
みにいきましょう


未詩・独白 セザンヌ賛 Copyright 鈴木カルラ 2007-06-26 00:13:37
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