おるふぇ

小さな埠頭に飾られた
裸婦像のデッサンは
優しい夜を映していて
僕はそれを見るのが好きだった

そのデッサンには
味のしない名前がついていて
僕が生まれてから死ぬまでの間に
たった三人が
その名前を呼んだ気がする

その三人の運命は
奇妙なカラクリで繋がれていて
その三人がみな一様に
身体の同じ部分に痣があった

生後間もなくしてついた痣
あの裸婦像にも同じように
同じ部分に
痣があった

痣は
深い悲しみの海だった
その最深部は
互いに共鳴し合い
一つの風景を形成する

僕には痣がない
だからその風景を知らない
裸婦像と三人だけが知る
風景はどんなものだろう

今日も小さな埠頭には
裸婦像のデッサンが
無意味に飾られて
この世界のどこかで
三人が同じ風景を見ている

僕はその風景を知らない


自由詩Copyright おるふぇ 2007-06-25 08:59:54
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