ちいさな背中 と 無力な両手
宮本 心


すやすやと

安らかな寝息を立てる

ちいさなちいさな背中



このちいさな背中に

どれだけの重荷を

背負わせてしまったんだろう



たくさんの痛みに耐えて

たくさんの寂しさを感じて

たくさんの苦しみを受けて



君にはなんの罪もないんだよ

君にはなんの責任もないんだよ



大人の都合で振り回してごめんね

大人の都合で惑わせてごめんね



若かったから

という一言では

到底片付けられない




何度も身体にメスを入れて

その痛みも

その苦しみも



何度も心に傷をつけて

その寂しさも

その辛さも




どうして代わってあげることができないんだろう

どうして防ぐことができなかったんだろう




君が麻酔の副作用に苦しんだ夜

パパは家族を裏切った


君がパパを許した夜

ママはパパを許せなかった




ママは

悔やみきれない過去一つ代えられないこの両手など

平凡な幸せ一つ掴めないこの両手など

大切な君一人救えないこの両手など

いっそなくなってしまえばいいと思ったの





だけど、

君をぎゅっと抱きしめたいから

君の涙をそっと拭いたいから

君の頭をくしゃくしゃに撫でたいから

君の手を引いて歩きたいから



君の

その小さな小さな背中を

たくさんさすりたいから




勝手な願いだけれど

勝手な想いだけれど



この無力なママの両手を

しっかりと掴んで立ち上がって欲しいんだ


この無力なママの両手を

もうしばらく頼りにして欲しいんだ





ママが両手に掴めるだけの

全ての

喜びと希望を君へ



ママが両手に掴めるだけの

全ての

幸せと愛情を君へ







いつか君自身の両手が

あふれるほどの幸せを掴む日まで


いつか君自身の両手が

あふれるほどの愛情を掴む日まで




自由詩 ちいさな背中 と 無力な両手 Copyright 宮本 心 2007-06-25 01:53:53
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