ノート(かたち さざめき)
木立 悟
飛び立つ鳥のかたちの木と
降り立つ鳥のかたちの木とが
風のなかでとなりあい
はばたきと狩りを語りあう
常にどこかにいる冬と
めぐりつづけるものらとの
軋轢の色とかけらがひらき
ひらいてはひらいては響きつづける
落ちつかぬものを落ちつかせようと
時間と音はすぎてゆく
何もかも怒りや怖れのふりをして
ほんとうはただひとつの悲しみでいる
渦まくものに触れ指を切られ
また生える指を見つめている
痛みの無さを燃すものはいても
応えの無さを問うものはいない
どこか遠くから器へと落ち
はねつづけ回りつづける影たちが
糸のような線を描き
すぎるものすべてを音にしてゆく
飛ぶものは少なく
歩むものはなお少ない
夕暮れの刻みを流す水
風を映しては言葉に変える
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