私の顔
なかがわひろか
私の部屋の壁には
いくつかの種類の顔が掛けてあって
私はその日の気分によって
それを取り替えているのです
私の部屋の壁には
老人もいれば
きれいな女性や
端正な顔立ちの男性のもの
そして中には子どもの顔もあるのです
今日は雨が降っていたので
そしてそれはとても久しぶりの雨だったので
私は壁から小学生くらいの子どもの顔を取って
買ったばかりの長靴と真っ赤な傘を取り出して
雨の中を歩こうと思いました
私は大人の体の上に
子どもの顔を乗せて
雨の中を歩きます
道行く人は皆怪訝な顔をして
私を振り返って
指を指して何かヒソヒソ話したりします
私はその人たちをやり過ごしてから
後でこっそりと跡をつけます
私は手に持っている包丁で
その人たちがお家に着いたところで
歌を歌いながら後ろから首をかき切ります
「あなたの顔をくださいな
あなたの顔をくださいな」
そして私の部屋の壁のコレクションに加えるのです
今日もいくつかの顔を持ち帰りました
明日はどの顔をつけましょう
(「私の顔」)