さっきから訳もなくティースプーンでカップの中を掻き混ぜてしまう
そんなにしたら紅茶が冷めてしまうのがわかっているのに
渦を巻く琥珀色の液体をじっと見つめる
「黙っていたらわからないじゃないか」
頭の上を語気を強めたアナタの声が通り過ぎる
押し黙ってしまうのは
言葉にすると何かが崩れてしまいそうだから
目の前にいるアナタがもっと遠くになりそうだから
金色のティースプーンをソーサーの上にカチャリと音をたてて置く
それが合図のようにアナタが言った
「俺 もう疲れたよ」
ワタシはティースプーンから指を離さぬまま
予期せぬ言葉に思わず顔を上げる
アナタがぼやけて見えて
溢れ出るものが頬をつたいカップの中に落ちた
哀しくて泣いているんじゃないわ
抵抗してもアナタに支配されてしまう自分が情けないのよ
おざなりの関係ならもう結構よ
ワタシは強く生きたい
だけど・・・
ピリオドを打ちたくてもできない弱いワタシがいる
悔しいけどアナタを愛してしまったから・・・
そしてそれを見透かすアナタがいる
伝えられない想いと
もどかしさに
また琥珀色の液体に
滴がポタポタ落ちていった