緑と金 Ⅲ
木立 悟




星が動く力の理由と
蟻が蟻である理由のはざまを
空はゆうるりとめぐりつづけ
かけらを降らせつづけている


定まりのないかたちの回転から来る
定まりのない音や色が
影まで至らぬ薄さに撒かれ
地と川へ落ち呼び合っている


枝につもるものは家になり
土に触れるものは金になる
空の半分を継ぐ緑
またたく家へとざわめきを登る子


風に巻き上げられた葉が
ひそかに曇に根づいては
雨のはじまりを緑に染め
水たまりの金を明るく照らす


夜が点いては消えてゆく
呼び合う声は唱になる
枝の家から手をのばす子
朝やけの波に触れてゆく


生まれる泡のひとつひとつが
定まりのない定まりからほどかれてゆく
降る唱 昇る唱は出会い
ざわめきを遠く見つめている


木洩れ陽の羽根に横たわり
午後を聴く子の手のひらに
星と蟻は眠りつづけて
緑と金の夢を見ている


















自由詩 緑と金 Ⅲ Copyright 木立 悟 2007-06-23 12:26:03
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