緑と金 Ⅲ
木立 悟
星が動く力の理由と
蟻が蟻である理由のはざまを
空はゆうるりとめぐりつづけ
かけらを降らせつづけている
定まりのないかたちの回転から来る
定まりのない音や色が
影まで至らぬ薄さに撒かれ
地と川へ落ち呼び合っている
枝につもるものは家になり
土に触れるものは金になる
空の半分を継ぐ緑
またたく家へとざわめきを登る子
風に巻き上げられた葉が
ひそかに曇に根づいては
雨のはじまりを緑に染め
水たまりの金を明るく照らす
夜が点いては消えてゆく
呼び合う声は唱になる
枝の家から手をのばす子
朝やけの波に触れてゆく
生まれる泡のひとつひとつが
定まりのない定まりからほどかれてゆく
降る唱 昇る唱は出会い
ざわめきを遠く見つめている
木洩れ陽の羽根に横たわり
午後を聴く子の手のひらに
星と蟻は眠りつづけて
緑と金の夢を見ている