創書日和「窓」 約束
士狼(銀)
ピアノの調律を数式化した教室で
黒板に書かれた文字を
僕たちは理解しようとしない
故郷の水不足を報じる朝日
此方では雨が降るけれど
牛の鞄ではダムにはならなくて
蛍に逢いたいと
彼女は溜息交じりに声を落とす
その声音さえも数式化する教室で
窓から逃がしたのは
いつの日か結ぶ約束
地上を往く人の
色鮮やかな傘に
軽く濡れた肩に
降り注いでいく
蛍の光にも似て
冷たい雫を掴む
僕たちは三階の窓から音の墜落を感じ
雨粒を数える課題を焼いて貰おうと
隠れた夕焼けに話しかける準備をしている
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創書日和、過去。