創書日和「窓」  約束
士狼(銀)

ピアノの調律を数式化した教室で
黒板に書かれた文字を
僕たちは理解しようとしない

故郷の水不足を報じる朝日
此方では雨が降るけれど
牛の鞄ではダムにはならなくて
蛍に逢いたいと
彼女は溜息交じりに声を落とす

その声音さえも数式化する教室で

窓から逃がしたのは
いつの日か結ぶ約束

地上を往く人の
色鮮やかな傘に
軽く濡れた肩に
降り注いでいく

蛍の光にも似て
冷たい雫を掴む

僕たちは三階の窓から音の墜落を感じ
雨粒を数える課題を焼いて貰おうと
隠れた夕焼けに話しかける準備をしている



自由詩 創書日和「窓」  約束 Copyright 士狼(銀) 2007-06-22 23:14:51
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