月のかけら
おるふぇ
いいことなんか ひとつもなかった
この町でも わたしは
今日も
歌をくりかえし くりかえす
『会いたいときに あなたはいない
空よ せめて 笑ってほしい
そうじゃなければ 隠してほしい
やさしいあなたを わたしの記憶から』
道に落ちてた 月をひろう
どうして 目の前に 輝きなんてあるのだろう
焦がれてしまうぢゃないか
ひろった月は
ポケットにしまわれたまま
いつか誰かに
渡そうとする
渡そうとする
けれど
忘れてしまうだろう
こんな月
月とは呼べないから
痩せてしまった 月のかけら
このギザギザのかたちと
ぴったり符合するかたちが
どこかにあるのだろうか
『会いたいときに あなたはいない
月よ どうか 笑ってほしい
どこかに落ちてた月のかけらと
出逢うことを 許してほしい』
歌になれない
歌が泣いてる
月になれない
月のように
わたしの知らない 歌をうたう
あなたの月は
もう 月なんだ
きれいなまんまるい
満月なんだ