ゆめまぼろし
山中 烏流

オレンジの三日月が
細やかな雨を降らす頃
私は屋根の上で
うさぎを探している
 
時計仕掛けの空は
星を降らしながら
ただ、じっと
佇んでいる
 
 
床に落ちている苺は
まだ、踏まないで
後で
ジャムにしたいから
 
冷蔵庫にあるバナナは
食べてもいいよ
どうせ
私は食べないと思うから
 
 
虹色の雲は
綿菓子よりも甘いから
ほら、見なよ
天使が食べにきてる
 
向こうの世界では
極上のおやつらしいよ
太らないし
虫歯にもならない
 
 
 (ひとときの
 
 (静寂が訪れる
 
 
何故か、淡いピンクの
月明かりに照らされて
うさぎが顔を出す
私は、それを捕まえる
 
もうすぐ
6時を指し示す空は
段々と赤みを増して
星を
吸い込んでいく
 
 
鍋を出しておいて
7時になったら
ジャムを作りたい
 
葡萄なら踏んでもいいよ
仕方ないから
ワインでも
作っておいてほしい
 
 
天使たちの
食欲は凄まじくて
虹色はもう
無くなってしまった
 
ただ、真っ直ぐに
空が見えるよ
天使がよたよたと飛び回る
空が見えるよ
 
 
 
もう、明けるよ。


自由詩 ゆめまぼろし Copyright 山中 烏流 2007-06-21 09:49:04
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