コンティニューム
美砂
靴をぬぎすてて
乾いた道を疲れるまで
進んできた
僕は裸足が好きだ。
裸足で土を踏みしめるのが
好きだ。
ときどきうめき声をあげさせられる、
そのふいの痛みが、なにか重大なことのレッスンのようで
好きだ。
立ち止まって、息を吸い、
海をみる
砂浜はすっかりなくなってしまったが
波は変わらず、汚れても変わらず
幼い日の海水浴
僕はあのころから、岸とは反対の方角に惹かれた
両親の規制をふりほどこうともがき
境界線としてはりめぐらされたロープにつかまって、
その先の海の色の薄気味悪さと、永遠に続く海原を
見飽きることなどなかった
なぜ、みな岸へかえるの、なぜ?
家はいつもうしろにあって、あたたかい、
よどんだ空気 腐りかけた果物に似た、生活のにおい
なまぬるさと巨大な、盲目な愛
僕はあのひとたちが
目をそむけてしまうものに
あのひとたちの望まない
反応をしてしまう
逃げ出すのではない
心のざわめきに
この波の呼びかけに
こたえるために
たったひとり
知らないところへ
言葉の通じないところへ
仲間のいないところへ
だがほんとうに会うべき人のいるところへ
みたこともない絵のあるところへ
きいたこともない音楽のあるところへ
信じがたい暑さ、信じがたい寒さ
信じがたい驚き、信じがたい喜び
どこまでもゆける
傷ついて血をながし
ほこらしげな
この足の
なすがまま