おい、おまえ絶対見るなよ
那津



金色に輝く馬に乗って、その侍は私の住む村を横切った

もちろん金色の馬なんていないわ

それは、“そう見えた”っていうだけのことだわ

その日、井戸で昔好きだった人が、パイプをくわえながら

都々逸を歌っていた


“あぁ 別れがぁ 野に咲かぬ 昼の  あぁ 酒の夢”


酔っていらっしゃるの?

「いや、酔ってはいないぞ」

そうですか あの水を汲んでもいいですか?

「ああ、好きにしろ」

はい、そうします

「ふん、気の強い娘だな、、
       そうだ、今日の夕方、ここに侍が通る
              そしたら
 これを
 渡してくれ」

はい、そうします




もっと、激しく生きて欲しいのに
その刀を捨ててしまうのね

もっと激しく生きて
私の心を袈裟懸けに叩き切ってほしい




金色の馬から下りて侍が

「娘、その刀でお前を切ってやろう」


ええ、心は晴れてございます

お侍様

























自由詩 おい、おまえ絶対見るなよ Copyright 那津 2007-06-19 15:25:52
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