天使
なかがわひろか

朝起きると僕の部屋に二匹の天使がいた
二匹はとても仲がよさそうで
僕はしばらくの間微笑ましい二匹の様子を眺めていた

何分か経って
二匹は急に交尾を始めた
天使は声を押し殺していたので
それほど迷惑ではなかったけど
キィキィという声が僕の部屋に響いた

一匹が果てた後
もう一匹の天使が卵を産んだ
卵はすぐに孵って
そこからまた一匹の天使が出てきた

天使はいくつかの卵を産んだ
そのどれもがすぐに孵り
そして生まれた子どもの天使がまた交尾を始めて
また新しい卵を産んで
気づけば部屋中が天使で一杯になった

さすがの僕もこれにはまいったと思って
どうするべきかとしばらく思案した
その間天使たちは部屋中を飛びまわり
花瓶だとか写真立てだとかありとあらゆるものを倒して
部屋は散々な様になった

まず羽をなんとかしよう
僕は近くにいた天使から羽をむしりとっていった
羽をむしられた天使はキィキィと
交尾のときとは少し違う声で
部屋中を駆け回った

僕は部屋中に溢れ返っていた天使の羽をむしりとって
残った天使の本体は
お腹も空いていたことだから
食べてみることにした

焼くと天使はとてもおいしそうな匂いをして
僕のお腹はキュルキュルと鳴った
天使はなかなか美味だった
今度友達にも食べさせてやろうと思った

かと言って僕の胃も底なしな訳じゃない
それでもまだまだたくさんの
羽をむしりとられた天使たちが残っていた
僕はそいつらを小さな鳥かごの中にぎゅうぎゅうに押し入れて
小腹が空いたときに食べようと思った

天使からむしりとった羽は
ふかふかしてとても柔らかそうだったので
そいつで新しい枕を作った

僕はお腹も膨れていたし
まだ少し眠り足りなかったので
新しい枕に頭を埋めて
もう一眠りすることにした

枕はとても
いい匂いがする

(「天使」)


自由詩 天使 Copyright なかがわひろか 2007-06-19 03:13:54
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